20090615

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むかしばなし1


ふたを閉じた便座の上で、考える人以上に考えている人のような体勢で目が覚めた。

「まずい」
率直な感想が豚肉の頭を駆けめぐった。

眠ってしまった。14時には友人が原稿を取りにくることになっていた。
腕時計の張りがチッ、チッと額のあたりで時を刻んでいる。
両腕で頭を抱えるようにしたまま、上体を起こすのが怖い。

まずい。まずいぞ。
こんな気分で目が覚めるのは、中学でテスト勉強を一夜漬けでやってから何度も
経験している。
どこかのだれかがなにかの本で、「人間は恐怖とスピードに慣れる生き物です」
と語っていたが、この恐怖感だけは45になった今でも自分を戦慄へと導く。

とか考えていても仕様がないので、観念する。
いざ勇気を振り絞って、顔を上げ時計を見た。

時計は6:45を指していた。
ひとまず安堵するが、今までの経験から言ってとても14時には間に合わない。
かといって1ページも進んでいない原稿を見せるわけにはいかない。

今から少しでも形になっているものを書き上げなければ。
そう思って豚肉はフフ、と微笑を浮かべた。

昨晩21時頃だったか、徹夜を覚悟してコンビニへレッドブル3本と
煙草1カートンを買いにいったではないか。
そこから帰ってきてすぐに、よしやるぞとパソコンを開いたではないか。
煙草をくわえながらキーボードを打つ指は迅速に動いていたではないか。

それらすべて、今日の14時までに原稿を仕上げるためだったではないか。
それは今後生きていく糧をつなぐためのものだったではないか。


それがいまや、生きるためという目的はそのままに、
「体裁の整ったものを用意する」という、こすずるい方向に傾いてしまっている。

自分はなんと人間らしい生き物なのだろうと思う。
いや、きっと周りも同じなのだろう。その場しのぎの施策に知恵熱を上げたりするのだろう。

ただ周りは自分よりも要領がよく、もっと高いところで同じように悶々とする場面を
迎えているのだ。
こんなに低いところで、それも45にもなってウンウンと脂汗を書いている自分は………

「おれは純粋なんだよ」

と締めくくりを声に出すと同時にインターフォンが鳴った。
豚肉の心臓は鼓動を早めた。




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3 件のコメント:

  1. あ、これ、
    まだ続いてたんだ!www


    赤ノリ

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  2. なにこれ。
    本家に変な書き込みしたから仕返しですか!

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  3. 赤ノリ…。

    じゃあもう片方は、青海苔?やきそば?たこやき?

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